英・bow   独:Bogen   仏:archet   伊:arco

木製の棒に馬の尾毛の束を差し渡して、毛の方で弦をこする。弓の使用はヴァイオリン族の発明より遙かに古いが、その完成は器楽自体よりも約2世紀遅れた。

最初の頃は小さな弓形の棒に毛束の蔓を張っている。手元の棒と毛束の交わりに平たい四角の木片を取り付けて、まっすぐに近い棒を用い始めたのは17世紀の初頭である。

毛束の張力を加減するには自在鍵を使用していたが、18世紀の前半より現在のようなネジ式に変わった。

弓の改良はコレリ、ヴィヴァルディ、タルティーニ(彼は1740年頃、以前より長くて軽い棒の取っ手に溝を彫り込んで滑らないようにしている)等のようなヴァイオリン曲の作曲家兼演奏家によって引き継がれ、最後はフランス人のトゥールト(1747〜1835)によって完成された。

トゥールトは長さの標準を定め、ヴァイオリン75p、ヴィオラ74p、チェロ72〜73p、として毛束を平らにする金属製の輪(たが)を根本に取り付けながら弦に対する接触面を広くした。
柔軟性や抵抗力の上で、棒に最も適する木材が、染色に使用されるブラジル産ペルナンブーコの木であることを検証し、あらゆる点からみて最も適切な反り具合等を正確に規定した。

以上のような完成によって楽器の音量は著しく増したし、一弓で弾きうる音符の数も増えた。
一弦を隔てる二弦間の素早い移行、同じ方向に向かう弓の反復、その他速いトレモロ、スピッカート、サンタンド、コル・レーニョ等の新奏法も編みだされて楽器の表現力は倍増したのである。

それ以後今日に至る弓の変形はすべてこのトゥールトの弓を標準にしている。




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