イギリス音楽

英:British music、  English music、  
独:
engliche Musik  仏:musique anglaise

  16〜17世紀に栄えた輝かしい伝統は天才作曲家バーセルの短命と共に途絶えてしまった。
  19世紀末から20世紀初頭にかけて起こったイギリス音楽のルネッサンスに至るまでの約200
  年にも近い音楽の空白時代が続いたが、独創的な才能に乏しかったにしろ、合唱に対する愛着
  はマドリガルを生み、ヘンデルの偉大な影響を受けた歌唱の伝統は今日まで受け継がれた。

  音楽の田舎者とみなされていたイギリスの音楽を国際的な地位まで高めたエドワード・エルガー
  も合唱形式において最も優れ、「ジェロンテアスの夢」のような雄渾壮大で、しかも神秘を湛えた
  オラトリオを残している。

  第二次大戦の終わりを告げた1945年に初演されたブリトゥンの歌劇「ピーター・クライムス」は、
  バーセル以来250年に渡る空白時代を一挙に取り戻したと言ってよく、イギリス歌劇の伝統は
  再興の光を浴びたのである。
  ブリトゥンもまた声楽を取り扱うと素晴らしく伝統の妙味を発揮する。

  ブリトゥンを生んだ現代イギリス音楽は、イギリス文化の伝統であるヒューマニティーの精神と
  ユーモアの感覚が活かされている。人間性を喪失していない現代イギリス音楽は、イズムや
  イディオロギーの虜となっている現代音楽の中でユニークな存在である。



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