終止形

英: cadence  仏: cadence  伊: cadenza
独: Schluss、Schluss formel

楽曲の終わり特有の和声構造。正格終止、変格終止、偽終始、半終止がある。

正格終止(フリギア終止)
 X (属七の和音)→T(主和音)の終止が典型。属和音から主和音に進んで終結する形(X→T、
 X→T)。終止感が強い。

 変格に対する正格という意味では最後の主音上の三和音を属音上の三和音(七の和音)で準備す
 る和声を指すが、調的な安定性が最も強い。

 近年はS(サブジェクト)−D(ドミナント)−T(トニック)の機能構成を持つものをさすようになっている。


変格終止(プラガル終止)

 下属和音(S)から主三和音(T)による終止で調性的音楽が盛んになってからは正格終止の後につ
 けられることが多かったが、元来はV7→Tの正格に対する変格として独立で用いられていたもので
 ある。
 そのような独立的な使用は、調性感の退潮と共に19世紀後半辺りから再び復活した感がある。
 下属和音から主三和音へ終止するもの。正格終止の対。

偽終止(独:トルークシュルッス、英:サスペンディッド・ケーデンス)
 属7の和音が主三和音に進まない終始(必ずしも終始形だけとは限らない)。
 実際には偽終止だけは曲の終わりを意味するものではない。


半終止(独:ハルブシュルッス、英:ハーフ・ケーデンス)
 18〜19世紀楽曲の途中の段落に多いもので、Xか希にWへ落ち着く和声形式を指す。
 曲の区切りなどで属和音(ときには下属和音)に代わる場合、または不完全正格終始をさすことも
 ある。


古典の終止
 16世紀頃には、既に終止点にはS→Tの機能感が発生しており、属七の使用はまだ無いがD→T
 の機能感は凝結しつつあった。

 しかし、終止のより古い形の標準的なものは「主音へ2度下行」する声の上、下等に築かれ、最後
 には3度を伴わないものである。
 18世紀にはバスの進行が属音への導音として半終止に利用された。


現代音楽の終止
 無調性音楽では終止形はあり得ないものであり、終止感ある終止点には、非調性的音楽であっても
 調的中心音への安定が必ず感じられるが、その場合にも固定的な形は無い。

 しかし、調性的音楽における正格、変格、14・15世紀楽曲の終止形などが暗示されていることは
 しばしば見られる。




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