カノン
カノンは「規則」、「標準」を意味するギリシャ語で、中世紀以来の音楽においては、もっとも厳格な 模倣による楽曲の一種を指す。 カノンの歴史は非常に古く、ロータ、ロンデルス、カッチア等は既に14世紀に現れていた。 単旋聖歌よりとられた、定旋律(cantus firmus)が他声部によって終止厳格に模倣されるカノン 風フーガ(fuga canonem)と呼ばれる楽曲が作られ、それが今日のカノンに発達した。 1320年頃イギリスで作られたと言われる“Sumer is icumen”(夏は来たりぬ)は六声部のロー タで、最古のカノンとして知られている。 カノンは更にネーデルランド楽派で発達し、バロック時代にも多く用いられたが、20世紀になって 線的ポリフォニーの再発見に伴って再び重要視されるようになった。 カノンの特徴を一般的にいえば、主題と呼ばれる一声部が旋律を始め、これが応答と呼ばれる他 声部によって、ある一定の時間的間隔をおいて正確に模倣される形式である。 そして、同じく模倣手法によるフーガにおいては模倣が主題のみに限られるのに反し、カノンは終始 模倣が行われる。 カノンはいろいろな観点から、大体次のような種類に分けることが出来る。 |
平行カノン | 応答は主題をそのまま厳格に模倣するものであって、最初の主題と応答との音程的間隔によって、同度のカノン(canon ad unisonum)、下5度のカノン(canon ad hypodiapente)等と呼ばれる。 |
転回カノン | 投影カノンとも呼ばれ、応答は主題を転回して用いられる。 |
逆行カノン | canon ad contrario。応答は主題を逆から模倣する。 |
逆行転回カノン | canon ad contrario riverso)。転回カノンと逆行カノンの混合型で、応答は主題の逆行旋律を、更に転回して用いる。 |
拡大カノン | 拡大(augmentation)と縮小(diminuition)によるカノン。応答が主題の音符の時価を、それぞれ何倍か、または何分の1かにして用いる。 |
群カノン | 主題も応答もそれぞれ2個以上よりなるもので、その数によって二重カノン、三重カノンと呼ばれる。 |
無限カノン | 英:infinite canon。 各声部が何度も繰り返し演奏されるもので循環カノン(サーキュラー・カノン、circular canon)、または永久カノン(パーペチュアル・カノン、perpetual canon)ともいう。 俗に輪唱(奏)といわれるのは、このカノンの一種である。 |
有限カノン | 英:finite canon、 独:abgrenzter Kanon。 コーダによって終止するカノン。 |
圏状カノン | カノンの各声部が何度も繰り返し演奏されるもので、一回の模倣ごとに次第に高く転調しながら模倣を繰り返すカノンで、純粋に技巧的なものである。しかし、全音階的に一音ずつ高く転調すれば、最初の出発調に戻るまでには6回の反復を必要とする。 |
混合カノン | 三声部以上のカノンにおいて、模倣に参与しない声部を有するもの。 |
謎カノン | 中世において、応答の模倣の方法を、不思議な文字や記号を使用して示したもの。 |
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