指使い・運指法

英:fingering   独:Fingersatz

   すべての楽器は演奏によって種々の音を出すので、技術の方式に適した指使い(運指法)が
   絶対に必要である。

   1.有鍵楽器の運指法
       パイプオルガン、ピアノ、オルガンなどの鍵盤に指を適応させる方法は、異なった時代、
       異なった演奏家によって大いに変化した。しかし、19世紀の初めから現代の主張に近
       いものが標準化された。
       この時代以前には、人差し指、中指、薬指の3指が主として用いられ、親指と小指は殆
       ど用いられなかった。

       バッハが若い息子エマヌエルの運指について、いさめた話がある。それは大演奏家だけ
       がやった親指を酷く広げて用いたことであった。
       また、バッハは弾きやすい指で強迫を、ひきにくい指で弱拍をという古い主張に頓着しな
       いで、すべての指を等しい条件に用いなければならないと主張した。

       エマヌエル・バッハは父の主張よりもさらに理論的な仕事をし、現代運指法の発明者とな
       った。
       しかし、中指が小指を越えたりする指の交叉する方法は残していた。

       バッハ親子が好んだ楽器がクラヴィコードであったということを記憶しなければならない。
       ピアノでは指の交叉が役に立たなくなり、かつ短い指の使用制限もなくなった。

       クレメンティは作曲における真のピアノ型式の発明者で、現代的運指の主張を確立した。
       親指の用い方は殆ど現代と同じであるが、ただ黒鍵上には用いなかったことが異なって
       いる。現代では、親指が音階やアルペッジョの奏法の中心点と主張されている。
       また、経過句の運指は終わりに達する点を考えて計画され、その分割は指の動きに応じ
       て合理的、自然的に行われる。
       これら音階、アルペッジョ、計画句等の運指法は、重音や和音の運指法と共に、一般に
       通じる基礎がうち立てられた。
       この技巧の基礎から、特性ある種々の運指法に発展する。


       19世紀の初め迄のレガート演奏は指のなめらかな動きでなされたが、最近では運指によ
       ってはあきらめなければならないレガートもペダルでなし得るようになった。
       ここで学習に役立つ運指法が芸術的表現にも必要なものとなった規則正しい運指は、音
       型の組織に一致したものでなければならなくなった。

       従って、作曲者によって指定された運指によって、意図された表現を試みるという域まで
       達するようになった。


       オルガンの運指はピアノの運指と殆ど同じであるが、楽器の性質上、完全なレガートが
       主張される。時々一つの鍵を一つの指で押さえながら、他の指と換えた後、前の指を自由
       にするいわゆる置き換えが要求される。

       音楽に関する印刷物中には、作曲者または出版者が暗示する運指法の変わった形式が
       ある。

       イギリス式運指法=弦楽器の運指法のように人差し指を1.中指を2、薬指を3、小指を4
       と数え、親指には+印を配している。

       アメリカ式運指法=アメリカ式運指法と言われる古いイギリス式には親指を5としたり、左
       手の指に逆の数字をつけたものも見いだされる。
       最近は英米両国でも、この式は廃れた。

       大陸式運指法=親指を1とし、人差し指から小指まで2から5としたもので、現代では世界
       至る所で行われている。


   2.弦楽器の運指法に関しては、ポジションで説明している。

   3.管楽器は左手で足りるだけの弁を具えているので、運指法は最も簡単である。

   4.木管楽器は音孔や鍵が両手の指の数よりも多いので、金管楽器よりも難しい。一つの指が
     種々の働きをする責任があり、事情によっては同一の音を出すのに数種の指使いがある。
       



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