楽式

英:musical form   独:musikalische Form   仏:forme musicale

    音楽形式ともいわれ、各種の音楽形式の原理とその実用使用に関する原理である。
    通常二つの部分に分かれ、一つを基礎楽式論、他を応用楽式論という。

    基礎学識論
     楽式の基礎となる諸問題を説明し、その主な内容は楽式構造、動機一部形式、
     二部形式、三部形式である。

   1.楽節構造
      楽節構造の完成した形は8小節(つまり8個の強迫を持っている)で表現され、
      これを大楽節と呼んでいる。これは更に二つの小さい構造に分けられるが、
      これは4個の小節(強拍)を持つもので小楽節と呼ばれている。
   
      大楽節は前楽節と後楽節と呼ばれる二つの小楽節より成る。
      小楽節はさらに小さな構造である動機に分解される。

      すべての旋律や主題が大楽節または小楽節の構造をとっているわけではないが、
      特に古典楽派とロマン楽派においてはこの構造が重要性を持っている。

      楽節構造はそれ自身規則的なものであるが、いろいろな理由から不規則な構造に
      変形されているものがあり、これを不規則構造という。

   2.動機
      音楽の構造における最小の独立的単位で楽曲の構造上非常に重要な役割を持って
      いる。2小節に2個の強拍からでき、律動的、旋律的、和声的に充分な特徴を備えて
      いなければならない。

      大楽節の中には4個の動機が含まれているが、それらの組み合わせにより動機組み
      合わせの四方式が成り立つ。
        第一方式=全部の動機が同一律動の反復によって作られるもの。
        第二方式=二つの異なる律動の組み合わせによるもの。
        第三方式=三つの異なる律動の組み合わせによるもの。
        第四方式=全部の動機が異なる律動によっているもの。

      上記のいずれの方式によっているかということは、大楽節の構造上重要な問題である。

   3.一部形式
      大楽節が独立した1個の楽曲として取り扱われる。

   4.二部形式
      2個の部分からなる形式だが、基礎楽式として扱うものは一つの部分が1個の大楽節に
      当たるため16小節の構造となる。
      律動上で同一の2個の部分がある時には「反復」といい(A−A)、異なる時は「対照」
      という(AーA’)

   5.三部形式
      3個の部分からなる形式だが、基礎楽式として扱うものは一つの部分が1個の大楽節に
      当たるため24小節の構造となる。3個の部分は提示ー対照ー再現(AーBーA)の構造を
      持ち、再現部には第一部を正確に反復するものと、変化を与える修飾的再現とがある
      (AーBーA’)
      三部形式の原理は楽式の重要な基礎となっている。



    応用楽式論
     基礎楽式の基礎の上に実際に用いられている各種の音楽形式を説明するもので、その
     主なものは複合形式の各形式である(下記の各項目)

   1.複合二部形式
      二部形式の複雑なもので、全体が二つの部分から出来ている点は基礎形式としての
      二部形式と変わらないが、複合二部形式の場合は一つの部分が2個以上の大楽節から
      出来ている。それが幾つになるかということは一定することが出来ない。
      複合二部形式の最も優れた一例は展開部を持たないソナタ形式がある。即ち提示部と
      再現部とから出来ている。


   2.複合三部形式
      基礎形式としての三部形式がさらに複雑にされて発展された三部形式である。
      複合三部形式の場合は各部分が二部形式または三部形式から出来る複雑な大規模の
      構造を持っているので、非常に多くの変形を見いだすことが出来る。
  
      メヌエット〜トリオ〜メヌエット、あるいはスケルツォ〜トリオ〜ツケルツォというような
      舞曲風な曲は多くこの形式に属している。この場合トリオは中間部ともいっている。
      舞曲風な曲の他にもソナタ内の緩叙楽章とか単独な様々な曲に対してこの形式が用い
      られている。


   3.ソナタ形式
      単楽章形式中最高のもので三部形式の発展したもの。提示部、主題展開部、主題再現
      部の三つの部分からなり、一層拡大された場合には第四部として終止部がおかれること
      があり、逆に縮小された場合には展開部が省略される。
      また、提示部の前に導入部や前奏が置かれることがあり、これが拡大されれば1個の
      独立した部分を形成することもある。

      主題提示部はソナタの重要な主題を提示する部分であるが、通常は複主題の形をとり
      第一主題と第二主題と名付ける。
        第一主題=特に重要でソナタ形式の真の基礎である。
        第二主題=第一主題に対照するもので性格も調も違っている。
   
      展開部はベートーベン以後特に重要視されるようになり、作曲者の技量を見る試金石と
      考えられるようになった。

      主題再現部
       提示部を再現するが、ここでは第二主題以下の部分が第一主題と同じ調にかえる。


   4.ソナタ
      多楽章形式の最高のもので4つの楽章からなるものが普通である。この場合第一楽章
      はソナタ形式、第二楽章は緩叙楽章(主として複合三部形式をとる)、第三楽章はスケル
      ツォまたはメヌエット、第四楽章はロンド・ソナタ形式の速い楽曲というのが基本形とみら
      れるがこれ以外の変奏曲形式、ロンド形式、二部分構成のソナタ形式等も用いられる。
    
      4つの部分からなるものがソナタの基本形だが、3楽章のものも非常に多く、2楽章のもの、
      5楽章のもの等あり、希には1楽章のみのものもみられる。

      ソナタという名称は、ピアノ・ソナタ、 ヴァイオリン・ソナタ、 フルート・ソナタ、 チェロ・ソ
      ナタ等の場合に用いられるが、室内楽(三重奏曲、四重奏曲、等)や協奏曲交響曲等も
      この形式によって書かれている。長い歴史の間には多くの作曲家達によっていろいろな
      変化が試みられ、現在ではソナタという形式の内容は非常に豊富なものになっている。


   5.ロンド形式
      現在のロンド形式は主として器楽用に用いられているが、その前身は声楽の形式だった。
      この音楽は独唱と合唱とが交替するもので、合唱は同じものが繰り返され、独唱は常に
      異なったものだった。この合唱の部分をロンドーといい、独唱の部分をクプレと言った。
      これは音楽的には循環唱歌の一種で、これが器楽化され、その形式をロンド形式という。 


   6.ロンド・ソナタ形式
      ロンド形式とソナタ形式の複合されたもので、三つの部分からなり第一部を主題提示部、
      第二部を中間部、第三部を主題再現部という。

      第一主題の中で、第二主題の後ろに第一主題が再び出現するところがソナタ形式と異な
      りロンド形式の特徴を取り入れている。
    
      第二部(中間部)でロンド形式のエピソードの性格を持つ部分で新しい主題を用いるが、
      その構成には一定したものはない。

      第三部(再現部)は第一部の再現であるが、ロンド・ソナタ形式には若干の変化が存在し、
      普通の場合だと4回出現する第一主題を3回に減らしたり、第二部をソナタ形式の展開部
      と同じに扱う場合もある。


   7.変奏曲形式
      主題を設定しこれを律動的、旋律的、和声的、調的等のさまざまな角度から修飾し変化
      する形式である。
      主題には他人の旋律を用いるのが普通であるが自分自身のものを用いる場合もある。
      主題に長いものは無く二部形式が最も多く、三部形式、一部形式も用いられる。
      主題を変奏する場合には出来るだけ主題を忠実に追うもの(厳格な変奏曲…主題の旋律
      を基本として行うことが多い)と主題からは離れているもの(自由な変奏曲…主題の和声
      を基本として行う場合が多い)とがある。


   8.フーガ
      多声音楽様式に属する最も重要な形式で、一つの主題を中心に模倣の原則によって
      展開する。
      フーガは厳格様式であるから声部の数が一定しており二声部以上。最も多いのは三声
      部と四声部とである。全体は提示部、展開部、終結部の3つの部分から出来ている。
      フーガの主題は厳格な規則に従って模倣されるがこれを応答という。それらの動機や
      対位の動機が自由に展開される部分をエピソードという。
      2つの主題を持つフーガを二重フーガ、3つの主題を持つフーガを三重フーガと名付け
      るが、この場合にも中心になるのは一つの主題である。
      小規模なフーガをフゲッタという。


    9.組曲
      多数の楽曲を集めて作るが、その代表的なものに古典組曲(17〜18世紀の舞曲
      形式の楽曲を集めたもの)と近代組曲(自由な小曲を集めたもの)とがある。


   10.幻想曲
       幻想性を重んじる楽曲で特別な約束はなく自由な構成を持っている。



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