撥弦楽器

英: plucked instrument   独: Harfeninstrumente
仏: instrument a cordes pincees

弦を弾いて音を出す楽器を指す。
ヨーロッパでは弓弦楽器よりも遙かに古くから使用されていて、その種類も多い。
弦を弾くには手指による方法と義甲による方法の二通りがある。
その他、歴史的なものとしてはハープシコード類のように鍵盤装置のものもあった。
なお、ヴァイオリン族のような弓弦楽器でも、ピッツィカートを奏する場合は一時的に撥弦楽器の働きをする訳である。

古楽器のクロッタは弓弦、撥弦を一つに兼ねた楽器で、バリトン(ヴィオラ・ディ・ボルドーネ)の共鳴弦を撥弦楽器と
してのみ使用することもあった。

手指によるものと義甲によるものを厳密に区別することは出来ないから、撥弦楽器を二つに分ける場合は、棹のある
ものと無いものに分類する方が適切である。

1.無棹
    枠に弦を張ったのみの最も基本的な楽器である。
    西欧においても太古から存在し、弦の数と同じだけの音しか発しないから、音楽的な要求が発達するにつれて、
    共鳴胴を具えながら多弦楽器になっていった。
    古くはエジプトのハープ、古代ギリシャ・ローマのリラ、キターラ、中世のプサルテリウム、クロッタ、ロッタU等々と
    あるが、今日、世界的に使用されているのはハープのみである。
    それに次いではツィターの類も一部の地方に親しませている。


2.有棹
    有棹の撥弦楽器は、棹に指板を具えていて、1本の弦でも異なった音を出し得るから、弦の数は少なくてすむし、
    楽器の大きさも手頃にまとまる。
    ヨーロッパではムーア人の進入と十字軍によって中世にもたらされた。
    古くはリュート、キタローネ、アンジェリカ、コラシオーネ、その他チェテラ、オルファリオン等とあるが、いずれも
    使用されなくなった。

    今日の有棹撥弦楽器として残るものは、ギターとマンドリンの2種類である。
    マンドリン、マンドーラ、マンドチェロはリュートの流れを直接に汲むもので半球形の共鳴胴と復弦を具えているが、
    手指の代わりに義甲で演奏するようになった。
    
    地方的はものとしては、ある種のバンドーラやロシアのドムラも現存している。
    
    ギターの方は、平らな裏板を有し、単弦を手指で演奏する。

    郷土楽器としてはスペインのバンドゥーリア、ロシアのバラライカ等があり、ニグロのバンジョーは軽音楽のリズム
    楽器として世界的なものになった。バンジョリン、ツィター・バンジョーはその派生楽器である。

    ウクレレも一般に親しまれている一種のギターで、なお20世紀におけるジャズの隆盛は古典ギターの構造と奏法
    に大きな革命をもたらし、ジャズ・ギター、ハワイアン・ギターを生んだ。
    



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