イタリア音楽
英:Italian music 独:italienische Musik
仏:musique italienne 伊:musica italiana
イタリア音楽は古代ギリシャに発するとは言い切れないが、直系の祖先として想定される。 ローマ統一後、6世紀の末に今日の長短調とは異なる音組織のグレゴリオ聖歌が現れた。 定かではないが、ギリシャや東方諸国の教会の聖歌の伝承・発展したものをグレゴリウス 一世が蒐集(しゅうしゅう)したというのが定説に近い。 この聖歌は、千数百年後の今日、カトリック教会に生きて伝えられているばかりでなく、全 ての時代を通じてイタリア音楽の根幹をなし、正しい意味で源流と言えよう。 グレゴリオ聖歌は北欧民族に伝えられたが、その和声感覚によって複音楽化され、ネーデ ルランドの多声楽の出現となり、逆にイタリアに影響した。ここからローマ楽派、ヴェネツィア 楽派が誕生した。保守的で荘重なローマ楽派はパレストリーナによって代表され、世俗的な 手法も取り入れたヴェネツィア楽派はジョバンニ・ガブリエり等によって代表される。 世俗音楽は、バラッタから15世紀末のフロットラ、ヴィラネルラ等の声楽を生み、16世紀中 頃にはマドリガルに発展し、劇や抒情詩の一部に結びついた。 16世紀末トスカナの大公の宮殿に音楽家や詩人や貴族達が集まり、ギリシャ風な音楽の 復活を試み、これが歌劇の先駆けとなった。 17世紀の後半から18世紀にかけてヴァイオリンの発明と共にコレルリ、モンテヴェルディ、 ヴィヴァルディ、タルティーニ、スカルラッティなどによって多くのソナタや室内楽が書かれた。 歌劇の発達とあいまって、イタリア音楽はヨーロッパの王座についた。 19世紀になってこの様相は一変し、歌劇は形式化し、器楽は顧みられず、ドイツ・ロマン派 の勃興と共に王座はドイツに移った。 そんな歌劇作家の中でも、ロッシーニ、ベルリーニ、ドニゼッティ、ヴェルディ等は気を吐いた。 ヴェルディの後は写実派(レオンカバルロ、マスカーニ、プッチーニ、ジョルダーノ)に受け継が れたが、ヴェルディには及ばなかった。 20世紀に入って、レスピーギ、ピツェッティ、マリピエロ、カルセラ等による、古典精神の再 認識と器楽復興を目指す一種のルネッサンス運動を通じて過去の栄光を取り戻した。 |