日本音楽

〔定義〕日本人の文化史上に、或期間存在した音楽、または現在も存在している音楽、邦楽ともいう。

〔種類〕声楽曲も器楽曲もある。
     声楽曲には独唱曲も斉唱曲もあるが、和声的な合唱曲は無い。

     声楽曲
         歌い物=神楽歌、催馬楽(さいばら)、朗詠、宴曲、謡曲、箏唄、地唄、小唄、端唄、長唄、
               歌沢、俚謡(りよう)、流行歌など。

         語り物=平家琵琶、説教祭文、説教節浪花節、浄瑠璃の各流(義太夫、大薩摩、一中、
               河東、豊後、薗八、繁太夫、新内、常磐津、富本、清元)節。

     器楽曲
         独奏曲=尺八曲、箏の調べ物など

         合奏曲=雅楽曲、能楽囃子、尺八連奏曲、箏連奏曲、箏三弦合奏、三曲、三味線連奏曲
               新内流し、神楽囃子、馬鹿囃子など

         純音楽=神楽歌、雅楽管弦曲、催馬楽、朗詠、宴曲、平家琵琶、薩摩琵琶、筑前琵琶、
               謡曲、尺八曲、箏唄、地唄、小唄、端唄、歌沢など。

         舞踊曲=久米舞、倭舞、東遊、神楽人長舞、五節舞、舞楽曲、白拍子舞の今様歌、田楽
               歌舞伎所作舞曲、常磐津曲、清元曲、歌沢振、小唄振、盆踊り唄、民謡曲など。

         演劇曲=田楽、能、猿楽能、神事劇、能楽、狂言、操人形劇、歌舞伎劇の両義太夫など。

〔曲種〕
         祭儀楽=神楽、倭舞、東遊、鎮魂歌、神事能、神楽囃子、田楽、久米舞、五節舞、
               悠紀主基風俗歌など

         宮廷楽=雅楽、舞楽、催馬楽、朗詠など

         仏教楽=声明、講式、和讃、御詠歌など

         能劇曲=能楽、狂言

         琵琶楽=盲僧琵琶、物語琵琶、平家琵琶、薩摩琵琶、筑前琵琶、錦心流琵琶、錦琵琶

         尺八楽=一節曲、明暗流、琴古流、郡山流、上田流、新尺八楽

         箏  曲=筑紫流、八橋流、生田流、山田流、新箏曲

         三味線語り物=説教節、義太夫節、文弥節、河東節、一中節、豊後節、薗八節、繁太夫節
                   新内節、常磐津節、富本節、清元節、源氏節、浪花節

         三味線歌い物=組歌、小唄、地唄、長唄、端唄、歌沢節、江戸小唄

         俚 謡=労作唄、盆踊唄、祝唄、馬鹿囃子、獅子舞など

         その他=新日本音楽、唱歌、軍歌、流行歌など


〔楽器〕    弦楽器=和琴、楽箏、筑紫箏、俗箏、新箏、楽琵琶、妄想琵琶、平家琵琶、薩摩琵琶、
              筑前四弦琵琶、筑前五弦琵琶、錦琵琶、一弦琴、二弦琴、三弦胡弓、四弦胡弓
              三味線

         管楽器=神楽笛、横笛、高麗笛、能管、篠笛、草笛、天磐笛、雅楽尺八、一節切尺八
               普化尺八、篳篥、笙

         打楽器=楽太鼓、火焔太鼓、荷太鼓、締太鼓、檐太鼓、陣太鼓、田々太鼓、団扇太鼓、
               括弧、三の鼓、小鼓、大鼓、田鼓、振鼓、釣鉦鼓、大鉦鼓、摺鉦、鐘、梵鐘、
               鈴、銅拍子、笏拍子、ささら、四つ竹、きこりこ、木琴、編木等


〔音階と旋法〕音階はすべて七音からなり、宮、商、嬰商、角、徴、羽、嬰羽がある。
         これに陽音階と陰音階の二つの配列がある。これを洋楽の音階に当てはめると
 
         陽音階=レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ド、(レ)

         陰音階=ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ド、レ、(ミ)

         雅楽の旋法=呂旋法と律旋法の七段旋法

         近代邦楽は五段旋法で陽旋法と陰旋法がある。


〔和声〕雅楽では、左方では笙を用いて和音和声をつける。その和声は五度和声で複雑。
     協和音と不協和音に分かれ、不協和音の解決も行われている。
     また一種のカノンも行われている。
     右方では、高麗笛と篳篥とが原始的な対位法を用いている。


〔曲の形式〕小曲には自由形式のものが多いが大曲には一定の形式を持ったものが多い。その主要
        なものは序破急の三段形式である。序破急は舞楽の形式で厳格な形で作られた三部の
        曲で成り立っている。
        一曲の中に序と破と急の三つの区分を有する。
        洋楽の三部形式にあたるものは雅楽の小曲や箏の手事ものに多くみられる。雅楽“越天
        楽”はその最も完全な例で、中央の部分は半終止で第三部に繋がり、最後は完全終止で
        終わる。


〔沿革〕四つの時期に大別され、更に細かく分けることが出来る。
     第一期=太古〜第6世紀中期の欽明天皇の頃までを原始音楽時代と呼ぶことが出来る。
     この期間には主として日本民族の原始的音楽が中心となっており、450年頃からは大陸から
     種々の楽器や音楽が輸入されたが、ただ輸入されたというだけで、我が国の人々がまだこれを
     学ぶまでには至らなかった。(久米歌、東遊、大和歌、駿河歌、神楽歌など)

     第二期=6世紀中期〜16世紀末の平安朝末まで。この時期には、アジア大陸から進歩した
           器楽音楽や舞楽が次々と輸入され、皇室や上層社会や寺社の饗宴などに愛用された。
           期間を国際音楽期間と呼ぶことが出来る。
           この時代にも大陸から次々と音楽が輸入されたが、それらに基づいて楽曲の新作、
           改革を試み、一方では我が国の歌舞を外来の音楽の形式に合わせ、新しい形式の
           音楽が出来た。(催馬楽、朗詠、今様歌、声明、和讃、講式、新猿楽、田楽能など)
     
     第三期=鎌倉時代〜江戸末期まで、総括して近代国民音楽時代ということが出来る。日本独
           特の国民的音楽を作り上げた時代である(尺八曲、箏曲、浄瑠璃、雅楽、能楽、三味
           線音楽、俚謡、義太夫、一中、常磐津、新内など)

     第四期=明治維新以降。第2国際音楽時代といえる。西洋音楽が輸入され、それを基礎として
           あらゆる教育機関が備わり、大正初期からはレコードにより、大正末期からはラジオ
           等により、国民のすべてに洋楽が普及されたので、その影響で新しい日本音楽が各
           方面から起こった(唱歌軍歌、童謡、流行歌)。しかし、旧邦楽は次第に衰退して行った。


〔特質〕古くから儒教の精神が普及し、神楽、倭舞、東遊は神聖なものとされ、雅楽は礼楽の一つとして
     高尚優雅なものとして扱い、襟を正してこれに接する態度を維持している。中世以降、禅宗の影
     響が強く、能楽は最も多くその影響を受け“わび” ”さび”をその理想としている。
     江戸時代の家元制度は芸風の破壊を防ぎ、その粋を保存する上に大きな役割をしてきたが、
     反面新しい音楽進歩発展を妨害していることは否めない。



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