レコード音楽

英: recorded music  独: Schallplattenmusik

レコード音楽第1期
 最初にレコードに音楽を録音したのは、エジソンの発明した蝋管レコードに、1878年頃
 に素人声楽家のリリー・モルトンで、専門家では1889年にスェーデンのソプラノ歌手ジ
 ーグリッド・アーノルドソンの歌ったのが最初であった。

 同じ頃にウィーンでブラームスが自作の「ハンガリー舞曲」を録音し、1980年にアメリカ
 でアデリーナ・ハパッティが数種の吹き込みを行った。

 1880年代から90年代にかけてクリスティン・ニルソンやパウリーネ・ルッカ、ゾフォア・
 スカルキ、イターロ・カンパニーニなどが録音したが、蝋管レコードだったために大量複製
 ができず、声を保存するのが目的だった。

 

レコード音楽第2期
 1896年に、ドイツ系アメリカ人のエミール・ベルリナーの創案によって蝋管の代わりに
 シェラックを材料とする平面盤が生まれ、針は上下動から水平動に変わった。
 この改良がレコード音楽に著しい影響を及ぼして、歌劇のアリアから純粋芸術歌曲に至
 るまで数多くの一流声楽家による吹き込みが行われ、初期音楽史「声楽時代」を招いた。

 1901年イギリスの歌手ルイーズ・カークビイ=ラン、パーソバル・アレン、ベン・ディビー
 ズなどが、ロンドンに創立されたグラモフォン・アンド・タイプライター会社で録音し、これが
 動機となって、フランスその他ヨーロッパ諸国に蓄音機会社が設立されると共に各社が競
 って一流歌手を専属化する傾向が現れた。
 シャリアピンがロシア以外で知られるようになったのもこの頃からである。

 1903年にコロムビア会社がマルチェラ・ゼンブリヒ、エルネスティーネ・シューマン=ハイ
 ンクなどを、また、ビクター会社がルイーズ・ホーマー、ロバート・ブラース等の吹き込みを
 しレコード音楽の声楽時代を画したが、一方器楽界でもグリーグ、サラサーテ、ヨアヒムな
 どが吹き込みを行い、1905年頃から管弦楽の録音が始まった。しかし、その多くは声楽
 の伴奏だった。

 交響楽が録音されたのは1917年にストック指揮のシカゴ交響楽団の演奏やストラビンス
 キー指揮のニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団の演奏からで、特にベートーベンの
 「交響曲第五番」の第二楽章の演奏はレコード音楽上画期的なものとされた。

 1989年にストコフスキー、1921年にトスカニーニ等が登場し、声楽、器楽を合わせて、
 1924年までにレコード音楽に現れない著名演奏家は皆無となった。

 この頃の録音周波数は350〜3000サイクルまでだった。
 この時代を旧吹き込みの時代と称している。


レコード音楽第3期
 1924年にマイクロフォンを利用した電気吹き込みが現れ、室内楽や交響楽の全曲物が
 どんどんレコード化されるようになった。また数十枚もの歌劇の全曲レコードが制作され、
 その音域は300〜5500サイクルにまで拡大され、回転も1分間に78回転と80回転を
 標準とし、約33pと約40pをレコード定型とした。



レコード音楽第4期
 ラジオとトーキーの発達はレコード組織を急発展させて、それまでのレコード音楽が片面
 数分で切断される欠点を改良する動機となった。
 
 また、それに好条件を与えたのがプラスチック工業の発達だった。
 そこで、微粒子物質のを材料として、それに細かな音溝で録音し、一分間33回転3分の1
 の速度で回転させる長時間レコード(
long playing recod 略してLP)が1948年から
 実用化された(日本ではLP盤と呼んでいる)。
 この発案者はピーター・ゴールドマークである。

 最初に発売したのはアメリカのコロムピア社で、1949年にRCAビクター社が1分間45回
 転のレコードを発表し、良音質と短い曲の録音に適しているので歓迎された。しかし、45
 回転のレコードはLPとは称さない。

 これらの新しい回転のレコードに対して、従来の78回転のレコードを「標準型レコード」
 (
standard playing record) 略してSPと称している(日本ではSP盤と呼んでいる)。
 周波数も20〜15000サイクルまで録音することになり、人間の耳が捕らえうる音響は完
 全に記録出来るようになった。
 

 一方、音の強弱によって音溝の間隔を変化させて録音する「変更溝レコード」の録音方が
 ドイツで発明され、SPの倍の録音が可能となった。
 この変動溝を45回転に応用したのを「延長レコード」(extend playing record)略して
 EPと称している(日本ではEP盤と呼んでいる)。

 テープの録音組織が発達すると共にLPを標準としたレコードが急激に進歩し、その録音
 技術も原音を忠実にとらえることが出来るようになり、長い楽曲を省略なしに録音すること
 になった。

 それと共に再生機も改良され、原音の完全再生を目的とした高忠実度(high fidelity 
 略してHIーFI)が考案されて、レコード音楽は独立した機械芸術の分野を持つこととなった。
 



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