室内楽

英:chamber music   独:Kammermusik
仏:musique de chambre   伊:musica da camera

  室内楽の名称は17世紀のmusica da camera(室の音楽)に由来する。
  当時の教会音楽に対す世俗音楽のうち、劇音楽ではない、君主や貴族のサロンで
  演奏するに相応しい少人数の合奏(宮廷音楽)を指した。しかし、17世紀の最も広い
  意味としては、教会と歌劇場に属さない器楽曲の総称にも使われた。

  この宮廷音楽としての室内楽が、18世紀末以降の近代室内楽へ転換する主流と
  なったのは、第一に弦楽四部形態の成立と、第二にクラヴィーアが合奏で独創的
  役割を獲得したことである。弦四部は弦楽合奏や管弦楽で原型が育まれ、四重奏は
  管弦楽から独立した。
  これらの音楽的成長と共に、市民階級の台頭につれ、音楽の場が宮廷サロンから
  市民の公開演奏会に移る傾向が強まる。

  19世紀以降は、室内楽の呼び名で次の音楽を総括する。
    一楽器用の独奏音楽
    二個以上の独奏楽器による重奏音楽
    歌劇と教会声楽以外の独唱・重唱歌曲

  シューベルト以降のリートの繁栄により、独唱・重唱歌曲は室内楽から切り離され、
  ピアノ音楽も19世紀に広い分野を拓いた為、別領域として扱われるようになった。

  パイプオルガンは中世期から教会に独自の音楽伝統を築き、一個の楽器が管弦楽
  に匹敵する習性を持つ為、昔から室内楽とは扱われない。

  そこで、一般通念としての室内楽は、弦、管、ピアノ等による少人数の重奏音楽で、
  その特徴は各楽器が対等の独奏性をもって重奏を形作ること、また、概して標題傾向
  を帯びず絶対音楽表現を追求することである。

  室内楽は音量や色彩が管弦楽に及ばず、描写や劇表現には不向きな反面、純音楽
  的楽想を絶対形式に表現するには最適の曲種で、多くは各種の楽器編成による数楽
  章のソナタ形式が用いられ、作曲者の純音楽的資質が明白に表れる。

  音楽の基本である四声を持ち、重奏の均衡が良い弦楽四重奏が典型的地位を占め、
  ハイドン以降の主要作曲家はこの曲種に力量を傾けている。この基本形に更に弦を
  加え、または減ずることにより弦楽二重奏、弦楽三重奏、弦楽五重奏、弦楽六重奏、
  弦楽八重奏等の編成が生まれる。



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